小さな物語たち

優しく、時に切ない、小さな物語を紡いでいきたいです。

ママ、心配して!〈後編〉

 よく晴れた日曜日。今日は公園に遊びに来ました。

 トモくんの風邪がなおり、ひさしぶりに家族みんなでおでかけです。

 とても広い公園で、まわりはたくさんの木にかこまれています。

 サキちゃんとトモくんは、すべり台やお砂場がある、ちびっ子ひろばに来ました。

 サキちゃんは、ブランコで遊びはじめました。

 トモくんは、このごろ上手になったあんよが楽しそうです。

「カメラを車にわすれたよ」

 そう言って、パパが駐車場のほうへと走って行きました。

 サキちゃんは、こんどは大好きなすべり台にのぼりました。

 サキちゃんがすべろうとしたとき、トモくんがころびました。

「だいじょうぶ?」

 と言いながら、ママがトモくんにかけよりました。

 それを見たサキちゃんは、すべり台をすべりおりると、走り出しました。

「ママったら、いつもトモくんばかり心配して! もういい、サキちゃん、とおくへ行っちゃうもん!」

 サキちゃんは夢中で走りました。

 気がつくと、あたりは木と草でいっぱいです。うすぐらくて、おばけが出てきそうです。

 サキちゃんは、ママたちのところへもどろうとしました。

 けれど、どちらを見ても、おなじような木が立っているばかりで、ママたちがどこにいるのかわかりません。

「ママ、ママ~」

 サキちゃんは、必死でよびながら、走りつづけました。

 ガサガサガサ

 とつぜん、うしろから大きな音がして、サキちゃんは、なにかに腕をぐっとつかまれました。

 サキちゃんは、こわさでさけびそうになりました。

 そのとき、ママの声がしました。

「サキ!」

 サキちゃんの腕をつかんでいるのは、ママの手だったのです。

 サキちゃんは、またママにおこられると思いました。

 でも、ママはおこりませんでした。

 サキちゃんをぎゅっとだきしめ、

「無事でよかった」

 と言いました。

 ママは泣きそうな顔をしています。サキちゃんの目からは、涙がぽたぽたとこぼれました。

 トモくんをだっこしたパパもそばに来て、サキちゃんの頭をなでました。トモくんは、サキちゃんを見てうれしそうにわらいました。

 サキちゃんも、とてもうれしいきもちになりました。

 

 公園にわらい声がひびきます。

 空が夕やけ色にかわるころ、4つのかげが手をつなぎ、なかよく帰って行きました。

 

(おわり)

 

ママ、心配して!〈前編〉

 サキちゃんには、2つちがいの弟がいます。弟の名前は、トモくん。

 パパとママがお仕事の日、サキちゃんはトモくんといっしょに保育園に行きます。

 

 トモくんは、よく風邪をひいて、高いお熱が出てしまいます。

 そんなとき、ママはお仕事を休んで、おうちでトモくんを看病します。

「サキちゃんも、保育園お休みする!」

 サキちゃんは、ママにしがみつきながら、言いました。

 けれど、ママはお休みさせてくれません。

「サキちゃんは元気だから、保育園に行くのよ。お友だちといっぱい遊んでね」

 と、やさしい声で言うのです。

 サキちゃんは思いました。お友だちと遊ぶのはたのしいけれど、本当は、もっとママといっしょにいたいのに・・・・・・。

 

 トモくんが、また風邪をひきました。

 ごはんをなかなか食べられないトモくん。ママは、トモくんの好きなお料理を、たくさん作りました。

 サキちゃんは、ごはんを残さず食べて、ママにほめられました。

 でも、サキちゃんは、トモくんのことがうらやましかったのです。

 だって、トモくんは、ごはんをぜんぶ、ママに食べさせてもらっていたんですもの。

 

 ママとおでかけするはずだった日にも、トモくんは風邪をひきました。

 ママは、トモくんを病院につれて行きました。

 パパが言いました。

「今日はパパとでかけよう」

 サキちゃんは首をふって、おうちの中で遊ぶことにしました。

 パパのことは、サキちゃんも大好きです。だけど、このまえパパとはおでかけしたから、こんどはママと行きたかったのです。

 

 サキちゃんは、トモくんみたいに、風邪をひきたいと思いました。

 夜ねるときに、おふとんをかけないで、パジャマをめくって、おなかを出しておきました。

「こうすれば、お熱が出るかな」

 そう思って、サキちゃんはワクワクしながらねむりました。

 けれど、朝おきると、サキちゃんのパジャマはズボンに入れてあり、おふとんもしっかりかけてありました。

 サキちゃんはがっかりしました。

 

 保育園の帰り道、サキちゃんがころびました。

 すこし痛かったけれど、ひざから血がにじんでいたので、サキちゃんはうれしくなりました。

「見て、見て、ママ!」

 けがをしたところを見せると、ママが言いました。

「サキちゃん、泣かなかったのね。つよいわね~」

 それから、サキちゃんのひざに、かわいいばんそうこうを貼ってくれました。

「ちがうの、ちがうの。サキちゃん、ママに心配してほしいの」

 ごはんの準備をするママのせなかに、サキちゃんはつぶやきました。

 けれど、ママの耳には、サキちゃんの声がとどきませんでした。

 サキちゃんのとなりでは、トモくんが遊んでいます。積み木をかさねて、うれしそうです。

 サキちゃんは、トモくんの作った積み木のおうちをくずしました。トモくんは泣いてしまいました。

 ママがおこりました。

「どうして、そんないじわるするの!」

 サキちゃんは、とてもかなしくなりました。だけど、なみだをぐっとがまんしました。

 

(つづく)

バッタ

バッタ

君のように

力強くジャンプしたい

 

君を見ていると

食べることは生きることだって

当たり前だけれど

シンプルに気づかせてくれる

 

脱皮の前は窮屈かい?

 

僕は

何かに抑え込まれているよ

でも

ここから抜け出せない

 

けれど

脱皮も簡単なことではないね

失敗をして

脚を失った君の仲間を見たよ

 

それでも

君たちは力の続く限り

精一杯生き抜くんだ

その命を

繋げていくんだ

 

バッタ

君のように

僕は力強く生きたい

 

 

 

潮風に乗って

届いたのは

あの日の想い

君との切ない夢

 

忘れたくても

この薫りが

今でも胸を締め付けるんだね

 

波の音に

紛れるようにして

あの時

君は泣いていたんだろう

 

そして

僕は気づいていたのに

何も声をかけられなかった

 

悔やんでいるよ

君のことを真っ直ぐに

受け止めきれなかった

僕の弱さを

 

あれからどのくらい

経ったのだろう

 

君は今

笑っているのかな

夢の続きを追っているかな

君が幸せだといいな

 

僕は今でもこの海で

大切なものを探している

 

寄せては返す波の中に

あの日の欠片を見つけて

 

苦い思いとともに

僕の選んだ未来を

宝物のように

ひたすら透き通るように

磨いている

 

いつか歌にして君に届けるよ

切なさを喜びに変えて

どこまでも

 

 

日々の中に

あれは小雨降る

肌寒い日

小走りで駆けていく

君の後ろ姿

 

傘持たぬ君に

けれども声は掛けられなくて

僕は小さく溜め息をついた

 

あれは大空に雲一つなく

晴れ渡った日

廊下ですれ違った君の大きな瞳が

キラキラと輝いていて

 

目が合った気がした

それだけで

僕の胸は大きく高鳴った

 

毎日は

そんな風に凸凹だ

切なさも喜びも

ごちゃ混ぜだ

 

でも

同じ日は一日だってない

 

だから

僕は愛おしいよ

その全てが

 

大切にするよ

この一瞬一瞬を

 

 

流れ星

流れ星よ

ボクの悩みをさらっていっておくれ

広い宇宙の中では

きっと些細な問題だろう

 

流れ星よ

とどまらないキミが

羨ましいよ

ボクは立ち止まってばかりさ

 

流れ星よ

一瞬のきらめきと

消えない灯りは

どちらが幸せだろう

 

流れ星よ

ボクは燻ってばかりさ

キミのように

突き進んでみるよ

 

流れ星よ

キミに願いはかけないけれど

その美しい輝きを

ボクは決して忘れることはないだろう

 

僕を彩る君の存在

こんな気持ちは

初めてなんだ

 

君の良いところ?

さぁ?

よく分からないから

困っている

 

だけど

それなのに

君に強く惹かれる

 

君のことが

頭から離れそうにないんだ

 

どうしたらいい?

君の一挙手一投足に夢中さ

 

君はそれを知る由もない

 

それでもいいや

 

君のことを考えて朝が始まり

夜が更けていく

 

そうして世界は回り続ける

 

君が彩る僕の毎日

鮮やかに広がる僕の心

 

僕の世界は加速度を増していく

 

僕の想いは

誰にも止められやしない